有川定輝先生について
私を深遠なる武道に導いてくださった有川定輝先生がお亡くなりになって、今日で二十年となる。
有川先生は峻厳の人であった。しかし、その峻厳の奥深くに優しさを湛えている人であった。
探求の人であった。その探究心は尽きることがなく、また一切の妥協を許さなかった。
研鑽の人であった。ただ、その姿を決して外に見せることはなかった。
表に出ることや派手なことを好まない人であった。陰にいながらも、常に凜とした佇まいであった。
激しく荒々しい技と恐れられることがあったが、ごまかしなく、淀みなく、ひとえに美しい技であった。
言葉に頼らない人であった。ただ、ひとたび発せられた言葉は、重く、深く、心に響いた。
強く鋭く、そして全てを見通すような眼を持つ人であった。
最後に病床でお会いしたときの、あのどこまでも深いまなざしを、私は生涯忘れることはないであろう。
武道に生き、その人生を全うされた人であった。
「道在爾」-道は爾(近)きに在り。道は、とかく高尚深遠なところに求めがちだが、実は天地を一貫した道が身近に、あるいは自己にあると。有川先生の墓碑銘である。
大東流合気柔術副本部長・世田谷支部長
教授代理 臼山 秀遠