立つこと、座ること

道場では、入門者に対して最初に立ち方、座り方を教える。私自身が武道を始めたときに、まずそれを師から教わり、そして入門者には最初にそこから始めるよう教えられた。

最初は、道場における礼法、所作としてそれを覚えるのだと思っていたが、修行していくうちにそれだけではないことが分かってきた。力まずに、自然に、真っ直ぐ立ち、真っ直ぐ座ることは思いのほか難しい。真っ直ぐ立ち、真っ直ぐ座れるということは、すなわち正しい姿勢、正しい中心、正しい重心移動であることを意味する。これができれば技に活きるし、逆にこれができなければ技は効かない。

立つこと、座ることは、最も身近であり、最も深いといえる。例えば、一回の稽古において20回の立ち、座りの機会があるとすれば、500日の稽古ではその回数は10,000回となる。これを意識して行うか漫然とやるかで大きな違いにつながるのは自明であろう。

武道では最初に学ぶことに極意が含まれていることが多い。ただ、それに気づくのは得てしてずっと後になってからである。立つこと、座ることはその一例であろう。

大東流合気柔術副本部長・世田谷支部長
教授代理 臼山秀遠

子供たちも一生懸命