武道という「道」

緊急事態宣言の解除に伴い、一部休止中であった世田谷支部の稽古も、感染症対策を徹底しつつ正常化してまいります。

さて、私が武道の世界に足を踏み入れてもうすぐ35年になります。この世界ではまだまだ駆け出しです。ただ、35年前に今の自分は想像も出来ませんでした。いつのまにか、すっかり武道の魅力に取り憑かれてしまいました。

先日観た、茶道を舞台にした映画『日日是好日』※の中で、次のような一節が心に残りました。

ー 世の中には、「すぐわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の二種類がある。すぐわかるものは、一度通り過ぎればそれでいい。けれど、すぐにわからないものは、何度か行ったり来たりするうちに、後になってじわじわとわかりだし、「別もの」に変わっていく。そして、わかるたびに、自分が見ていたのは、全体の中のほんの断片に過ぎなかったことに気づく。 ー

私が歩んでいる武道という道も、まさにこの繰り返しです。「すぐにわかるもの」が溢れている今の時代ですが、「すぐにわかるもの」で「すぐにはわからないもの」を表わすことは決してできません。

この長い道を照らしてくれるのが先達であり、行く先を指し示してくれるのが師匠でしょう。私は本当に師匠に恵まれました。ただ、歩んでいくのは結局のところ自分自身、独りきりです。そして、この道は過去に遡っていくようでありながら、未来に繋がり拡がっていきます。

これから何年も何十年も経ち、いずれ後から来る人たちに、行く先を指し示したり、その道を照らしたりすることができるなら、これ以上の幸せはありません。

大東流合気柔術副本部長・世田谷支部長
臼山 秀遠

※ 2018年公開の日本映画。原作は、森下典子著『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』。