礼について

武道を修行する上で、「礼」は欠かすことのできない要素です。我が師匠である大東流合気柔術・近藤勝之総務長は次のように述べています。

「 礼とは自分の命を守ることです。礼が無くなると“無礼”といいます。礼を失うと“失礼”といいます。礼を欠くと、必ずトラブルが生じます。
今から150年以上昔の侍の時代、座敷で他人と相対する場合は、刀は必ず正座した自分の右側に置きました。左に置くといつでも抜刀できるということになります。一寸でも刀に接すれば斬られてしまいます。敵意が無いことを相手に示すために、刀を右側に置いたのです。このように礼を尽くすということは自分の命を守ることにつながるわけです。
大東流の座礼では、最初に左手を出し安全かどうかを伺います。安全を確認してから、利き腕の右腕を出して背筋を張り頭を下げます。畳から一こぶし位で頭を止めるように肘関節を曲げ、肘が畳につくように座礼を致します。それから利き腕の右手を戻し、左手を戻す順番になります(ちなみに座礼と謝る時の礼の仕方は違います。謝る時は、顎を胸に付けて頭を畳につけます)。 」(『大東流合気柔術 秘伝目録 一ヵ条編』合気ニュース刊より)

この教えに基づき、大東流の稽古では「礼」の甘さを許しません。「礼」の甘さはそのまま稽古の甘さ、技の甘さにつながります。また、「礼」は道場外の実生活において最も活きる術(すべ)となります。「礼」は修行の入口であると同時に、極意とも言えるでしょう。

大東流合気柔術副本部長・世田谷支部長
臼山 秀遠